くすのきハイツの紛争劇は、管理組合が抱えた問題の氷山の一角にすぎない。築後三〇年超のマンションが間もなく一〇〇万戸を突破する。住民の高齢化が進んでいる。国交省の「平成20年度マンション総合調査」では、この十年ほどで六〇歳以上の世帯主の割合が、二五・七%から三九・四%へと増えている。逆に四〇歳代以下は、四八・六%から三五・六%に減少。少子高齢化の荒波が、マンションにも打ち寄せ、管理組合に「理事のなり手不足」という難題を突きつけている。
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管理組合は、住人の理事がいなくなったら、どう対処すればいいのだろう。機能が停止してしまったら……。ここでも「第三者」の存在がクローズアップされる。福岡市郊外、のどかな田園地帯に築三二年、九〇戸のマンションが建っている。外観からは管理組合の理事会が真っ二つに割れ、住民総会で怒号が飛び交い、怪文書が舞って訴訟合戦寸前に至ったことなど想像もつかない。ごくふつうの郊外型のマンションだ。数年前の秋のことである。管理組合の理事長は、病院での抗がん剤治療を終え、重いからだを引きずるようにして帰宅した。マンションの玄関先で下水管の補修工事が行なわれていた。前の代の理事が総会の承認を得て、発注した工事だった。「ごくろうさん」と業者に声をかけてエントランスを入った。と、向こうから、まるで待ち構えていたかのように会計担当の理事がつかつかと歩み寄ってきた。フウッとため息がもれる。厄介な人物だった。案の定、会計理事は理事長の顔を見るや、「この工事、すぐ中止せんといかん。話があるけん。時間をつくってくれんね」と言った。「病院から戻ってきたところでね、ちょっと休みたい。あとにして」「だいじな話たい。手間はとらせん。今晩でも話に行く」「今夜は久しぶりに家族みんなで外へ食事に行くから、日を改めようや」「その食事会、おれもいく。そこで話をしよう」と会計理事は執拗に食い下がる。