子ども部屋の鍵の有無には、子どもの年齢、性格、親の考え方、親子の力関係など、複雑な要因がからんでくる。ぼくはその決定プロセスに調整役として参加しながら、そこにその家族のあり方が象徴的に現われてくるのを興味深く見まもっている他ない。そういう時、ぼくは建築家であると同時に、一人の未熟な父親として、将来、自分の子どもが部屋に鍵をつけたいと言いだしたらどうしようか、と考えているのだ。住宅の設計が家族のあり方に影響を与えるとすれば、設計をおこなう建築家は、子ども部屋の鍵に限らず、住宅にかかわる問題すべてを、その住まい方まで含めて、厳しくかつ愛情をこめて見とおす“父親”の眼を持つ必要があるのかも知れない。
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そうだとすれば、ぼくの場合、設計技術の面ではまずまずの域に達していても、職業以前の“父親”としての未熟ゆえに、住宅の設計者としても未熟だ、ということになるだろう。