世界でも例のない高齢化のスピードにより、年々と医療費・介護費用がかさんでゆく日本社会。深刻な高齢化社会であるにもかかわらず、なぜか自分の老後については「老人ホームに入ればいい」という安易な解決策が合言葉のように言われている。実際そのとおりに、かつては医療法人や社会福祉法人しかできなかった老人医療介護施設が、今では民間でも経営できるようになっている。そして全国に老人ホーム、グループホームと呼ばれる施設が異常発生のように次々と設立されている状況だ。
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しかし当然のことながら、民間の施設は採算を第一に営まれている。安心・快適を売りにする民間施設のパンフレットを見てみれば、入所費だけで1千万単位のお金がかかり、なおかつ毎月20万30万の費用が請求される。これはとても介護保険の報酬でまかなえる額ではない。親を預ける側の若夫婦にしてみても、子育てをはじめ自分たちの生活に精いっぱいで、とても自分の親を安心で快適なホームや施設に預ける余裕などない。加えて言えば、このように全国にたくさん増えている施設の一部では、入所中に介護者から胸を叩かれて肋骨を折ったり爪をはがされたりといった痛ましい虐待事件が起こり始めているともいう。こうした事実からも目をそむけてはいけない。「老人ホームに入ればいい」と安易に考えている60代、70代の人は、今一度踏み留まって考えるべきときがきているのではないだろうか。一方で、施設に移り住んだ老人が、もともと住んでいた家の状況に目を向けてみると、住宅地にぽっかり空いた大きな穴のごとく、誰も住んでいない荒地のような家が残されているばかりである。病院や施設に移った本人は、そのまま永遠に帰れないことの方が多い。空洞のように残ってしまう前に、なぜその家や土地をもっと生かせなかったのだろうか、と思ってしまう。親世代がそうした大きな土地や家を持ちながら、その子どもたちは核家族としてそれぞれ別の家庭を持ち、都心に建てられたマンションに移って暮らしていたりする……。